ご飯がないとお腹がすくじゃないか(大日本帝國陸軍編)

 第二次世界大戦において、大日本帝國陸軍の補給がお粗末だったことは有名だが、じゃあどんぐらい悲惨だったのかなぁというのはあまりリアリティをもって語られていない気がする。
 もちろん戦中派の方々は身をもって知られてはいるのだろうが、戦後生まれの、豊かな日本しか知らない世代にどれほどのことを伝えられたのか、という疑問は残る。


 戦史叢書は戦後編まれた公刊戦史で、このなかで描かれる日本軍の実態には背筋の凍るものがある。
 たとえば、大戦後半の南方戦線についての資料、『南太平洋陸軍作戦(5)』における第17軍の食糧事情だ。


 まず、端的にいって糧食がない。仕方がないので畑を作り栽培することにするが、収穫が見込めるのは数ヵ月後だ。それまでの間は狩猟採集生活を余儀なくされる。一日の食料が飯ごうのふた一杯の野草だったりする。各人の体力も落ちる。規律も乱れる。やっとのことで畑に何がしかが実れば、荒らすものが出る。荒らした兵隊は銃殺に処された。関係者の証言として、人肉食についてほのめかされたりする。
 仮にも公刊戦史がほのめかしているのだ。おそらく、人肉食は実際にあったし、けして少なくなかっただろう。


 幽鬼のようにやせ細った、という。実際に鬼に堕した者も出たのだ。
 末期の太平洋戦線は悲惨の一言に尽きる。戦闘がなくても、病気と飢餓で一日の死亡率が15%から30%を超える部隊が出るのだ。

 このような状況で戦い続けた将兵の健気さと、このような状況を作ってしまった組織としての無能。
 この二つを混同して語るものには気をつけるべきだ。美化されるべきは将兵の健気。軍という組織はぶっちゃけウンコ。
 このあたりをゴチャゴチャにして第二次世界大戦を語る奴はものすごい馬鹿か扇動屋だと思う。

 まぁ健気な将兵もだんだん我慢できなくなって所によっては単なるチンピラになっていったりしたが。戦争マジおっかねぇ。